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購買行動を変えるラベル:ニュートリスコア導入の実際とその効果

フードニュートリ 編集チーム · 佐々木 恵理 · 2026.08.12 · 読了時間 9分 · 閲覧 1 ·
ポイント — 本記事は、フランスとベルギーにおけるニュートリスコアのような栄養ラベルの導入状況を比較し、その背景、算出方法、および消費者の購買行動への影響について詳述しています。このラベルは製品の栄養品質を視覚化する強力なツールですが、食事全体のバランスを保証するものではないという限界も指摘されています。

「このパッケージの数字、一体何を意味しているのだろう?」

スーパーマーケットの棚の前で、手に取った商品の裏側を見つめる消費者が増えています。フランスやベルギーといった欧州の食卓では、色鮮やかなアルファベットのラベルが、私たちの選択を静かに、しかし強力に導いています。

* ニュートリスコアは、製品の栄養品質をAからEの5段階で視覚化したラベル制度です。 * フランスとベルギーでは、導入の背景や社会への浸透度に明確な違いが見られます。 * このラベルは「完璧な食事」を保証するものではなく、より良い選択を助けるためのツールです。

フランスとベルギーの食品栄養ラベル比較

なぜ栄養情報の「見える化」が必要になったのか? 夕暮れ時のパリのスーパーマーケット。買い物カゴを手に持った主婦が、パッケージの隅にある色付きのロゴをちらりと見て、迷わず商品を棚に戻します。彼女が目にしているのは、製品の栄養バランスを一目で判断できる「ニュートリスコア」です。 The international journal of behavioral nutrition and physical activity (2024) によると、Nutri-Scoreの有無や製品の栄養品質は、すべての従属変数において中程度から大きな効果量を示しました。

ニュートリスコアとは、食品の栄養価をA(最も健康的)からE(注意が必要)までの5段階で色分けして表示するシステムです。欧州連合(EU)の機関や消費者団体からは、従来の複雑で分かりにくい栄養表示を改善し、消費者が直感的に健康的な選択ができるようにすべきだという圧力が強まってきました。

背景にあるのは、肥満や生活習慣病の増加に対する危機感です。情報の透明性を求める声に対し、複雑な数値計算を介さずに「直感」で判断できる仕組みが求められました。フランスでは政府主導の動きが強く、一方でベルギーでは業界の主導による浸透が見られるなど、国ごとに導入のプロセスが異なります。

では、具体的にどのようにして国ごとにアプローチが分かれているのでしょうか。

栄養スコアラベルがついた包装された野菜製品

制度の進め方:フランスとベルギーの違い

朝の光が差し込むブリュッセルのカフェ。新聞を読みながら、地元の人がパッケージのラベルを確認しています。ベルギーでの導入は、フランスとは少し異なるリズムで進んできました。 International journal of environmental research and public health (2023) によると、チーズ製品においては、HSR(健康的な栄養プロファイル)に分類された製品の63%が健康的なスコアとして分類されました。

フランスにおけるアプローチは、非常に強力なリーダーシップに基づいています。政府機関が主導し、公衆衛生の向上を目的として、ニュートリスコアを国家的な食生活改善の柱の一つとして位置づけてきました。これにより、多くの大手食品メーカーが早期から導入に踏み切る環境が整いました。

一方でベルギーでは、政府による強力な義務化というよりは、業界の自主的な取り組みや、地域ごとの政策的な選択という側面が強く見られます。フランスが「トップダウン」的な性質を持つのに対し、ベルギーは「ボトムアップ」的な、あるいは業界主導の浸透プロセスを経てきました。

この制度の違いは、実際に消費者がどのようにラベルを利用しているかに影響を与えています。

スコアは一体どうやって計算されているのか? キッチンで料理の準備をする時、塩の量や砂糖の量を確認するのは日常的な光景です。ニュートリスコアの計算プロセスも、これら日常的な要素に基づいています。 Sante publique (Vandoeuvre-les-Nancy, France) (2024) によると、ワークショップに参加した受益者(n=37)では、食事の改善に関する認識が平均53.2%向上しました。

スコアの算出には、まず「マイナスの要素」が考慮されます。具体的にはエネルギー密度(カロリー)、糖分、飽和脂肪、塩分といった、摂取しすぎると健康に影響を与える可能性のある成分です。これらが高いほど、スコアは低くなります。

一方で、果物、野菜、全粒穀物、タンパク質、脂質の質といった「プラスの要素」も計算に含まれます。これらが高いほど、スコアは改善されます。最終的なAからEの判定は、これらマイナス要素とプラス要素のバランスによって決定されます。

計算のプロセスを整理すると、以下のようになります。

  1. マイナス項目の集計: カロリー、糖分、飽和脂肪、塩分の値を算出します。
  2. プラス項目の集計: タンパク質、食物繊維、果物・野菜・ナッツ類の含有量を算出します。
  3. バランスの計算: マイナス項目をプラス項目で調整し、最終的なスコアを導き出します。
  4. 段階の設定: 算出された値に基づき、AからEの5段階に分類します。

ただし、専門家からは注意も呼びかけられています。スコアが高いからといって、それだけを食べれば健康になれるわけではないという点です。

では、実際にこのラベルは人々の行動をどう変えたのでしょうか。

2つの国の食品成分リスト比較

実際の効果と消費者の反応

週末の家族連れが賑わうスーパーマーケット。子供が手に取ったお菓子を、親がラベルを見て判断します。ラベルの導入は、消費者の購買行動に変化をもたらしました。 PLoS medicine (2021) によると、NS(Nutri-Score)は健康的な製品の購入を7.9%増加させ、NWは26%増加させることが関連付けられていました。

研究によれば、ニュートリスコアのようなラベルが表示されることで、消費者が選択する製品の全体的な健康性が向上することが示されています。例えば、従来のモデルと比較して、ラベルを活用することで健康的な製品の選択率が有意に高まる傾向があります。

また、教育的な取り組みも効果を発揮しています。例えば、ワークショップなどの教育プログラムと組み合わせることで、参加者の食生活の改善意識が大きく向上したという報告もあります。

特定の食品カテゴリーにおける動きも注目されています。例えばチーズ製品において、ニュートリスコアによる格付けを行った結果、多くの製品が健康的なカテゴリー(スコア3.5以上)に分類される一方で、スコアが低い製品も明確に区別されるようになりました。

ラベルは強力なツールですが、それだけで全てが決まるわけではありません。

スコアを超えた視点:食事のバランスと品質

食卓に並ぶ色とりどりの料理。それらは単なる数字の集まりではなく、私たちの生活を支える大切な要素です。

専門家の間では、スコアが高い製品だけを選べば良いというわけではないという共通認識があります。スコアはあくまで「その製品単体」の評価であり、一日の食事全体のバランスを保証するものではないからです。

ニュートリスコアの真の目的は、処方箋を与えることではなく、消費者がより良い選択をするための「判断材料」を提供することにあります。

研究では、製品の栄養品質の変数が、消費者の健康に関する依存変数に有意な影響を与えることが示されています。つまり、ラベルによる情報の可視化は、個人の健康状態や食習慣の改善に寄与する可能性を秘めているのです。

最後に、この制度の限界と正しい向き合い方について整理しておきましょう。

項目ニュートリスコアの役割注意すべき点
目的栄養情報の直感的な把握完璧な食事の保証ではない
判断基準カロリー、糖分、塩分等のバランス単一製品の評価である
活用法選択肢の一つとしての利用組み合わせによる食事の多様性

補足:情報の限界について ニュートリスコアは非常に便利なツールですが、これさえあれば健康になれるというわけではありません。例えば、非常に健康的な成分が含まれていても、カロリーが高ければスコアが低くなることがあります。また、逆に低カロリーでも栄養素が不足している場合もあります。ラベルはあくまで「一つの指標」として捉えることが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q: ニュートリスコアは両国で義務付けられていますか? A: 厳格な意味での「全製品への義務化」は国によって異なります。フランスでは非常に高い浸透率を見せており、実質的な標準となっていますが、ベルギーでは業界の主導による導入が進んでいます。

Q: どのような製品が高いスコアを得やすいのですか? A: エネルギー密度が低く、糖分や塩分が控えめで、かつ野菜や果物、全粒穀物などの健康に寄与する成分が含まれている製品が高いスコア(AやB)を得やすい傾向にあります。

Q: スコアが高ければ、それを食べ続けるだけで健康になれますか? A: いいえ。スコアはあくまで製品単体の栄養プロファイルを示すものです。健康を維持するためには、スコアに関わらず、多様な食品を組み合わせたバランスの良い食事を摂ることが不可欠です。

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